松山青年会議所 第73代理事長 塩出 祐貴からのメッセージ
私たちを取り巻く環境の変化は目まぐるしく、AIの発展によるテクノロジーの進化や、コロナ禍を経て活況を呈しているインバウンドとグローバル社会への対応、ダイバーシティ推進の重要性の向上など、私たちも時代の変化に取り残されることなく、変化へ対応していくことが求められている。中でも2020年から世界を震撼させた新型コロナウイルス感染症の流行を経て社会や私たちの価値観は大きく変容し、新たな転換点を迎えている。また、地方の人口減少は喫緊の課題となっており、愛媛県においても全体の6割にあたる12の市と町が消滅可能性自治体として挙げられ、その他のすべての自治体についても人口減少対策が必要と指摘されている。
私たちは地域をリードする青年経済人として、これらの変化と問題に対応しながら、社会へ新たな変革を起こすべく、未知なる道を切り拓き、明るい豊かな社会の実現のため自らを律し行動を起こしていかなければならない。
松山青年会議所には先輩諸兄姉が積み重ねてきた73年の歴史とこのまちのために尽くしてきた信頼と実績がある。今こそ、私たちがその想いを背負い、産学官民の連携の軸としての役割を果たし、山積する地域の課題を共に解決する運動を起こしていく必要がある。
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故郷の大切さとこのまちへの想い
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私は三人兄弟の長男として松山市に生まれ、高校時代まで過ごしたのちに大学進学を機に松山の地を離れた。将来は何となく家業を継ぎたいという想いはありつつも、特に目的の定まらない学生生活を送っていた。そんな中私が就職し、東京へ出たのは東日本大震災が起こった2011年のことであった。当時新入社員であった私は復興支援活動として被災地である東北の陸前高田市で数カ月の間、仕事をする機会を得ることができた。その時私が見たものはまちそのものがなくなり平地となっている光景と故郷をなくしてしまった人々の姿であった。それまでは自分の故郷に対してそれほど意識したことはなかったが、もし、自分の故郷であるまつやまがそうなってしまったらどのような感情であるかを考えた時、初めて故郷であるこのまちを大切にしていかなければならないという郷土愛に気づ くことができた。
私が青年会議所に入会したのは特別な想いがあったわけではなく、交友関係の輪を広げ、知り合いを増やしたい、住み暮らすこのまちに社会貢献がしたいといったありきたりな理由からである。入会当初は先輩に言われるがまま出席をするだけであったが、当時の理事メンバーは新入会員である私から見て威厳とこのまちのために本気で頑張る熱意を感じ、憧れのような想いを抱いたのを覚えている。自分自身も成長し、いつか同じステージで活躍したい。その想いを胸に今まで青年会議所での活動に臨んできた。 -
産学官民連携による地域と市民が主役のまちづくり
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現代社会において、持続可能な地域づくりはますます重要な課題となっており、その実現には、多様な産学官民のステークホルダーと協力し合うことが不可欠である。単年度制で毎年役割の変わる青年会議所の活動を通じて持続可能な地域づくりを行っていくためには、特に行政との連携強化がその鍵を握っており、私たちの活動と行政が目指す方向性をすり合わせ、足並みを揃えて同じ方向へ向けて歩む必要がある。また、松山青年会議所は松山市と連携して、市民と行政がともにまちづくりについて考え、行動するきっかけづくりの場とするために2024年度で第40回を迎えるまつやま市民シンポジウムを開催してきた。より良いまちづくりのためには市民がまちづくりに関心を持ち、行政と一体となって行動を起こす必要がある。この目的を達成するため、シンポジウムという形式にとらわれることなく、松山青年会議所がハブとなり、産学官民が連携した事業を展開していく。
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まちへの想いと熱をひとへ伝播する
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松山青年会議所では、ひとの意識を変え未来を切り拓く「ことばのちから」を軸として、各種SNSを活用し運動の発信を行ってきた。ことばには無限の可能性があり、想いを乗せた言葉はひとを動かし、地域を動かし社会を変えることができる。私たちはこのことばの無限の可能性を探り、市民の共感を生んでいかなければならない。
どんなに良い事業を企画しても、それに参加してくれる市民がいなければ事業は成り立たない。明るい豊かな社会の実現へ向けて青年会議所が推し進める運動をさらに加速させるため、松山青年会議所メンバー全体の広報活動に対する意識を上げ、それぞれの委員会ごとにしっかりとした広報戦略を持って、まちづくりへの想いと熱を伝播させ共感を生む広報活動を展開していく。 -
未来への希望を紡ぐために
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社会の多様性が増す中で、歴史、身体的条件、価値観、経済社会状況などの多様な背景を有する人々と共生していくダイバーシティの重要性がますます高まっている。誰もが活躍できる社会を実現するため、そのような多様な背景を持つ次代を担う若い人材に可能性を見出し、青年会議所としてこれからの社会を生き抜くための力を与える事業を行っていく。また、私たちは2024年にわんぱく相撲女子全国大会松山大会を主管し、子どもたちが本気で向き合い、喜びや悲しみ、悔しさなどの感情が揺れ動いた場面を目の当たりにすることで、子どもたちのみならずメンバー自身も成長する機会とすることができた。その経験を基に、よりレベルアップした子どもたちの心身の健全育成に繋がるわんぱく相撲まつやま場所を実施し、挑戦心と道徳心、人と全力で向き合う大切さを学ぶ機会を提供していきたい。
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組織の魅力を理解し伝える
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全国の青年会議所の会員数は減少傾向にあり、松山青年会議所でも2000年に最大215名いた期首会員数は現在半数以下になってしまっている。会員の数はそのまま組織力に繋がり、組織力がこのまちを変える原動力となる。40歳までという年齢制限がある青年会議所において持続可能な組織として存在するためには基本運動である会員拡大は必要不可欠であるが、会員拡大は組織の存続のためだけでなく組織を理解し、他者へ伝えること自体がメンバーの成長に繋がる活動である。従来の手法に固執することなく幅広い視野で新しい手法を模索し、組織一丸となって拡大を進めていかなければならない。
また、会員数を増やすためには新しいメンバーを迎え入れるだけではなく、退会者を減らすことも重要である。青年会議所の使命である成長を通じた楽しさを体感できる研修カリキュラムを行い、理念共感の輪を広げていく。 -
まつやまの目を世界へ、世界の目をまつやまへ
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アフターコロナにおける観光需要や円安の進行により日本各地では訪日外国人が増加し、オーバーツーリズムが問題となるなど、インバウンドが非常に活況となっている。しかしながら、まつやまでは他地域と比較してインバウンドが十分であるとは言い切れず、実際に見かける外国人の数もまだまだ少ない。世界の目をまつやまへ向けるためにはまずは私たち市民一人ひとりが世界への興味関心を持ち、まつやま市民の目を世界へと向け、インバウンド対策の強化を必要なものとして認識しなければならない。
また、青年会議所は世界各地に存在している大きな国際ネットワークを持つ団体であり、世界との友情を育む機会に恵まれている。そのネットワークを生かして、海外LOMとの姉妹締結を模索するとともに、市民の皆さま、メンバーに国際の機会を提供していきたい。 -
社会から信頼される強靭な組織へ
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青年会議所では様々なルールがあり、そのルールやコンプライアンスを遵守することで、社会から信頼される団体となっている。しかし、近年の松山青年会議所は入会歴の浅いメンバーの増加により、青年会議所としてのルールやプロトコルを認知していないメンバーが存在し、明文化されていないルールに関しては認識のないまま忘れ去られているものもある。ルールや規律は存在するだけでは何ら意味を持たず、各会員が認識し、行動や言動で体現することで初めて意味を成すものであり、常にこの周知は行っていく必要がある。
また、時代が変化していく中で、メンバーの価値観や社会から求められるコンプライアンスも変化しており、定款・諸規則が適正であるかは常に検証し、議論を行い、必要によっては改正していかなければならない。社会から信頼される強靭な組織となるべく、時代が変わっても守るべき部分と改革しなければならない部分をしっかりと見極め、組織改革を行っていく。 -
祭の未来を見据えたブランディング
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毎年春に開催される松山春まつり(お城まつり)は多くの地域の皆様に参加していただいている、連綿と受け継がれる松山青年会議所の一大事業である。大名武者行列や市民パレードの参加者を中心として多くの市民にまつやまの歴史・文化を発信し続けてきた。これまで行われてきた春まつりを新たなステージへ進めるためには今一度原点に立ち返って目的をしっかりと見定め、将来の方向性を見据えたブランディングを行っていくことが必要不可欠である。近隣の市民のみならず、周辺地域や観光客を含めたより多くの人にまつやまの歴史・文化を発信し、参加者が楽しむだけでなく地域を活性させるような事業へと昇華させていきたい。
また、2025年度で4年目となる地域のたからを活性化させる取り組みとして行っているマラソン事業においてもブランディングは非常に重要な課題である。開催当初の目的であった地域の活性化と魅力発信に繋がっているかを今一度検証し、参加者に地域の魅力を感じていただける事業にしていかなければならない。そして、2026年以降の事業譲渡へ向けて協力者、協力団体を増やし、地域と参加者、運営を担う主催者などすべての関わる人にとって意義のある事業にしたい。 -
世代と地域を超えた繋がりを
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じゃがいもクラブは青年会議所の有志によるゴルフを行う趣味の会でありながらも、歴史は古く、全国の青年会議所に存在する格式ある団体である。各地区における懇親を図る意味から1972年より西日本地区大会が開催されており、松山青年会議所としては2025年に2013年以来4度目となる第52回日本JCじゃがいもクラブ西日本地区大会を主管させていただく。ゴルフというスポーツを通じて、現役、シニアの世代の垣根を超えた交流を行い、シニアの先輩諸兄姉から昔ながらの歴史を学ぶとともに、訪れる参加者の皆さまへまつやまの魅力と松山青年会議所の想いを伝えられるような設えを用意し、松山青年会議所が大切にしているおせったいのこころを感じていただける大会を構築したい。
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結びに
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「先入観は可能を不可能にする」これは今アメリカのメジャーリーグで活躍し、誰もが成し遂げられなかったことを次々と成し遂げている大谷翔平選手が高校生時代の監督から言われ、今でも大切にしている言葉である。私たち「大人」は日々先入観にとらわれ自らの持つ可能性を狭めてしまっていないだろうか。今一度「青年」として夢と大志を抱き、自らの可能性を信じて行動を起こし、このまちをより良くしていこう。
可能性を信じ 未来を創る